難しさは級によって別物です。「簿記は難しい」とひとくくりにしない
「簿記の独学は難しい」という声と「余裕だった」という声が両方あるのは、どの級の話かが抜けているからです。
3級と1級では、必要な勉強時間が10倍違います。同じ試験の名前で語れるものではありません。
商業高校で簿記を学んだ経験から、級ごとに何が難しいのかを具体的に書きます。
級ごとの難易度と、難しさの正体
| 級 | 勉強時間 | 難しさの正体 |
|---|---|---|
| 3級 | 50〜100時間 | 最初の「借方・貸方」を抜けられるか |
| 2級 | 150〜350時間 | 工業簿記という別ジャンル、そして連結会計 |
| 1級 | 500〜1,000時間 | 範囲の広さ+半年に1回しか受けられない |
難しさの種類がまったく違います。3級は「入口の壁」、2級は「新ジャンルの壁」、1級は「継続の壁」です。
3級で難しいのは最初の2週間だけ
3級の難しさは、実は冒頭に集中しています。
最大の関門が「借方(かりかた)」「貸方(かしかた)」です。左が借方、右が貸方と覚えても、なぜそちら側なのかが最初は分かりません。
私自身、仕訳の意味が腑に落ちるまでかなり時間がかかりました。ここで「簿記は自分に向いていない」と判断してやめる人が多いのですが、それは早すぎます。
これは理屈で理解するより量をこなすほうが早い部分です。1日10問を2週間続けると、ある日から手が勝手に動くようになります。ここさえ抜ければ、3級の残りは坂が緩やかになる。
そのほかの難所は次の3つですが、いずれもパターンを覚えれば処理できます。
- 貸倒引当金 — 「まだ発生していない損失を計上する」という発想が直感に反する
- 減価償却 — 月割計算で間違えやすい
- 決算整理仕訳 — 3級の山場。流れを図で押さえると楽になる
2級が難しい本当の理由
2級の難しさは量ではなく、質が変わることにあります。
① 工業簿記は商業簿記の続きではない
私は商業高校の2年次に工業簿記を履修しましたが、商業簿記に慣れていたぶん、最初はかえって戸惑いました。同じ「簿記」という名前でも、やっていることが違うためです。
商業簿記が「取引を記録する」のに対し、工業簿記は「原価がどう流れていくか」を追いかけます。商業簿記の延長で読み進めると、途中で何をしているのか分からなくなる。
ただし工業簿記は範囲が狭く、慣れると得点源になります。最初の壁さえ越えれば武器になる分野です。
② 連結会計が独学教材で理解しにくい
2級商業簿記の最難関です。親会社と子会社を1つの会社として見せる処理で、文章で読むと抽象的で掴めません。
独学者が最も苦しむ論点であり、ここで止まる人が非常に多い。逆に言えば、講義形式なら数十分で通過できることがあります。
③ 時間との戦いになる
2級は3級以上に試験時間が厳しい。解く順番の戦略が必要になります。具体的な進め方は簿記2級の独学の勉強方法にまとめました。
1級が難しいのは「続けられないから」
1級の難しさは、理解力より継続にあります。
ネット試験がなく、統一試験は年2回のみ。落ちれば次は半年後です。その間、一人でモチベーションを維持し続ける必要があります。
さらに4科目に広がり、1科目でも極端に低い得点があると不合格という足切りがあります。苦手分野を放置できません。
詳しくは簿記1級の独学は現実的かで書きました。
「難しい」と感じたときに確認すること
難しさには乗り越えられるものと、教材を変えるべきものがあります。
乗り越えられる難しさ
- テキスト1周目で分からない箇所がある → 普通です。2周目で見え方が変わります
- 仕訳がまだ手に馴染まない → 反復が足りないだけ
- 模擬問題の点数が少しずつ上がっている → 順調です
教材を変えるべき難しさ
- 同じ論点で2週間以上進んでいない
- 1周したのに模擬問題が半分も解けない
- すでに一度不合格になっている
後者に当てはまるなら、努力の問題ではありません。判断基準は独学が厳しいと感じたときの見極め方にまとめています。
難しさを下げる3つの工夫
① 毎日触る — 簿記は積み上げ式です。週末にまとめてやると、毎回思い出す時間で消えます
② 読む3割・解く7割 — 読んで分かった気になるのが最大の罠です
③ 分からない箇所に印をつけて先に進む — 完璧に理解してから進もうとすると止まります
よくある質問
Q. 数学が苦手でも大丈夫ですか?
A. 大丈夫です。使うのは四則演算だけで、数学の知識は不要です。必要なのはルールを覚えて正確に処理する力です。
Q. 3級で挫折しました。向いていないのでしょうか?
A. 挫折する場所が「借方・貸方」なら、それは全員が通る壁です。反復量が足りていないだけの可能性が高い。
Q. 2級の難易度は3級の何倍ですか?
A. 勉強時間で3倍前後です。ただし工業簿記が加わるため、体感の負荷はそれ以上になります。
Q. 独学と講座で難易度は変わりますか?
A. 試験の難易度は変わりません。ただし理解までの時間は変わります。特に連結会計と標準原価計算で差が出ます。
Q. 何回落ちたら諦めるべきですか?
A. 回数ではなくやり方を変えたかで考えてください。同じ教材・同じ進め方の繰り返しでは結果は変わりません。
※本記事は2026年8月時点の情報です。試験の詳細は日本商工会議所の公式サイトでご確認ください。
級ごとの進め方を最初から確かめたい方は、簿記の独学の全体像をご覧ください。

